ひのき柱 背割りから四方スリットへ
カンザキ建設の柱はオール四寸角のひのき無垢、自然乾燥材です。自然乾燥にすることで、木本来の樹脂が残っているため天然の殺菌性と抗菌性が確保でき、香りも素晴らしく人を癒してくれます。
人工乾燥の柱ですと水分だけでなく、木の大切な成分である樹脂も失ってしまい香りも少なくなります。
写真の左はひのき背割り柱(乾燥させる為あらかじめスリットを1本入れております。)自然乾燥の柱は断面から樹脂がみえます。
右はひのき人工乾燥、水分だけでなく油分も少なく白っぽい印象を受けます。特徴として表面の割れは殆どないのですが柱の中で割れが生じてます。
なぜ木の家を建てる上でわざわざ大切な成分を失わせる必要があるのか、意味が理解出来なかったのですが、答えはシンプルです。
水分と樹脂、油分があると、集成材を作るのに接着剤でくっつかないからです。そして反ったり割れたりするとクレームの原因になるからでした。
カンザキは土台には青森ひば無垢4寸角。
自然乾燥に拘っているのは、10年後に防腐剤や防蟻剤を散布しなくて済むために、最良の材料と基礎高を上げ、更に風窓を設けて通風を確保する工法を選んでます。
無垢の木で自然乾燥の柱を使っている建設会社は、現在は殆ど存在しなくなりました。
理由は柱が割れたり、反ったりする材料を扱える職方さんが極端に減ったからです。
そのひび割れを欠点とみるか、生きている素材だから呼吸していると理解できるかで、選ぶ工法も材も根本が変わります。
いままでカンザキでは柱は背割りや関西で主流であった背割り無しなどもトライしたりしておりましたが、2024年9月からは、「四方スリット」の柱を導入していきます。
背割りとは柱の中心手前まで1本のスリットを入れて、他の面のひびを防ぐ工法ですが、柱が見えない大壁が主流となったいま、壁にボードを張ると壁が膨らむことがあり、要所要所で柱を削る必要があって、大工さんの手間が多く掛かっておりました。柱が背割りから開いて反りますと、建具の建付けが悪くなったりすることもあります。
解決方法として「四方スリット」柱を数か月の間、カンザキ本社屋上に置いて検証しました。
南と北にそれぞれ置いて、表面が割れるか、ひびが入るか、柱がねじれるかを検証、実験した結果、北に置いた柱はひび割れも少なく、雨風にさらされても、流石ひのき、丈夫なものです。
南に置いた柱は直接日差しに当たっている影響で割れが多少多く入っておりますが、構造上問題はなく、上棟してから屋根、外部が囲われる工事期間を考慮しても問題がないことが実験で検証されました。
四方スリットは、13ミリ前後のスリットで柱を均等にゆっくり乾燥させるため、柱の反りが大変少ないことが判りました。人工乾燥でも割れは発生するため、四方スリットを採用する建築会社はありましたが、無垢自然乾燥の柱では、もしかしたら、カンザキ建設が最初かも知れません。
いままでの大切な建築哲学は引き継ぎ、より良い工法を探し求めて更なる向上心をもって挑戦していきたいと思います。
しかし、下の写真のように化粧柱は、背割りのままこれからもいきます。ややこしくてすみません。
2019年カンザキ建設で設計、施工した、木造商業施設の吉野ひのき無垢360ミリの化粧丸太で超、貴重な材料です。
神﨑隆馬